起業の夢を続けるために。大坪和民さんのセミナーで学ぶ「お金の流れ」

やりたい仕事が見つかって、開業に必要なものを調べ始めた。お店やサービスのイメージも、少しずつ形になってきた。

そのとき、開業したあとの「お金の流れ」まで思い描けているでしょうか。

2026年10月9日、奈良県コンベンションセンターで開かれた、大坪和民(おおつぼ・かずひと)さんのセミナーに参加してきました。テーマは、創業計画書と資金繰り。これから起業する方はもちろん、事業を始めたばかりの方や、起業を支える方にも知ってほしい内容をご紹介します。

売上と入金は、同じタイミングとは限らない

当日、スクリーンに映し出された言葉の一つが、「黒字でも、現金は尽きる」でした。

売上があることと、今日使えるお金があること。この二つは、同じとは限りません。

たとえば、お客様がクレジットカードで支払った代金。お店ではその日に売上が立っても、口座に入金されるのは後日です。その間にも、仕入れ代金や家賃などの支払いはやってきます。

パン屋でカード決済の売上が発生し、材料代を先に払い、そのあと売上代金が口座に入る一例
売上が立つ日と、実際にお金が入る日は別になることがあります。入金前に支払いが来る場合を描いた説明図です。

大坪さんは、売上と入金、支出の時期がずれることを、身近な例を交えて説明されました。そこで登場するのが「資金繰り表」。いつ、いくらお金が入り、いつ、いくら出ていくかを整理する表です。

開業にいくら必要かだけでなく、開業後に手元のお金がどう動くか。その見通しを持つことが、この日の大きなテーマでした。

パン屋さんの例で、実際に表を作ってみる

今回のセミナーには、話を聞くだけでなく、資金繰り表を自分で作る時間もありました。題材は、これからオープンするパン屋さんです。

開業のために必要なお金、毎月の家賃や材料費、人件費、借りたお金の返済。用意された条件をもとに、一つずつ表へ落とし込んでいきます。

売上代金の受け取り方にも、条件がありました。半分は現金、残り半分はクレジットカード。カードで支払われた分は、翌々月に入金されるという仮定です。

パンが売れた金額を、そのまま「今月使えるお金」にしてはいけない。売上の数字を追うだけでは見えなかった時間のずれが、表にすると具体的になります。

さらに大坪さんからは、売上が落ちた場合や、仕入れ値が上がった場合も考えてみるよう、お話がありました。

予定どおりの数字を並べて終わりにせず、計画が変わったらどこに影響が出るのかまで考える。自分のお店やサービスに置き換えてみたくなるワークです。

資金繰り表で、これからのお金の出入りと残高を確認する。前月の残りに入るお金を足し、出るお金を引いて月末の残りを計算する。
資金繰り表では、これからのお金の出入りと残高を確認します。月末の残りを先まで確認すると、お金が少なくなる月に気づけます。

数字を、自分の言葉で説明できるように

創業計画書の説明では、日本政策金融公庫の書式を見ながら、創業の動機、事業の内容、必要な資金、売上の見通しを整理していきました。

ここで繰り返し伝えられたのが、数字の「根拠」です。

たとえば、売上を見込むなら、単価はいくらで、何人のお客様に、どれくらいの頻度で利用してもらうのか。希望する売上の数字から、具体的な商売の姿へと掘り下げていきます。

パン屋さんの売上見込みの説明例。1日20人、1人の購入額500円、月20日営業なら月20万円。1日20人の根拠も考える。
1日20人、1人あたり500円、月20日営業と仮定した、パン屋さんの売上見込みの説明例です。当日のワークとは別の数字です。

日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックでも、売上高や売上原価の予測に計算根拠があるかを確認する項目があります。日本政策金融公庫「創業計画書セルフチェック」

大坪さんが重視されていたのは、経営者自身が、必要なお金と返していく見通しを自分の言葉で説明できることでした。

質問の時間には、受講料を先に受け取る事業のお金の管理や、仕入れのある商売の見通しについても話が広がりました。同じ「資金繰り」でも、仕事によって悩むところは違います。実際の事業に引き寄せて考えられるのも、こうした場のよさです。

大坪さんが、資金繰りを伝える理由

大坪さんは、事業者向けの金融業や銀行で、約20年にわたって融資業務を経験されてきた方です。現在は、合同会社 大和財務サポートで資金調達などの支援に取り組まれています。

セミナーの冒頭では、資金が足りずに困っている経営者を、これまで何人も見てきたことを話されました。そして、その会社の先には、働く人や、その家族の暮らしもあるのだと。

そうした現場を知っているからこそ、これから起業する人に資金繰りの重要性を伝えたい。それを、ご自身の使命と考えているというお話でした。

この背景を知ると、お金の話が、事業や人の暮らしを守る話につながります。貸す側の視点と、資金を必要とする経営者の状況。その両方を経験してきた大坪さんのお話を、これから事業を始める方にも聞いてほしいと思います。

大坪和民さんと参加者の集合写真。中央の白い服の大坪さんを矢印で示しています。
セミナーでご一緒した皆さんと。中央の白い服の方が大坪和民さんです。

セミナー終了後に記念撮影。

起業前にも、起業を支える人にも

これから起業する方なら、開業費用の先にある、毎月のお金の動きを考えるきっかけに。

事業を始めたばかりの方なら、自分の仕事ではいつ入金があり、何の支払いが先に来るのかを整理する機会に。

起業を支援する方なら、相談者の「やりたいこと」と「続けていける計画」を、どうつなぐかを考える材料になります。

夢を事業にしていくとき、誰に何を届けるかを考えるのと一緒に、お金の流れも見ておく。今回ご紹介したいのは、そのために実際に手を動かし、質問できる学びの場でした。

今回参加したセミナー

  • 名称:夢を「事業」に変える第一歩! 失敗しない創業計画書と資金繰りの基本
  • 開催日時:2026年10月9日(金)19:00〜21:00
  • 会場:奈良県コンベンションセンター(奈良市三条大路一丁目691-1)
  • 講師:大坪和民さん/合同会社 大和財務サポート
  • 案内参加費:2,000円(今回開催分のチラシ記載)
2026年10月9日に奈良県コンベンションセンターで開催された創業計画書と資金繰りの基本セミナーのチラシ

今回参加した、開催済みのセミナーのチラシです。次回の日程・内容・参加費は主催者へご確認ください。

「自分の事業のお金の流れを、一度きちんと考えてみたい」と感じた方は、大坪さんに次のセミナーについて尋ねてみてください。

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