畑の恵みを、食卓の笑顔へ。コトコト・奥田晶子さんの想いにふれたお食事会

植物や商品が並ぶ店内で、お食事会の参加者に話をする奥田晶子さん
confiture cotocotoの奥田晶子さん。畑と食卓をつなぐ想いを伺いました。

野菜をおいしく食べたい。でも、忙しい毎日の中では、料理をする時間が足りないこともあります。

そんな暮らしのそばで、畑の恵みと食卓をつないでいるのが、奈良県天理市の「confiture cotocoto(コンフィチュール コトコト)」です。

2026年10月20日、奥田晶子さんのお話を伺う小さな交流会「NARA source meet」に参加してきました。コンフィチュールを使った特別なランチとともに、奥田さんがこの仕事を始めた理由や、日々大切にしている想いを聞く時間です。

木のテーブルに、緑がいっぱいの店内。ここで伺ったのは、おいしいものを作る、その先にあるお話でした。

植物が天井や窓辺に飾られ、木の長いテーブルが置かれたコトコトの店内
植物に囲まれた店内。木のテーブルを囲んで、奥田さんのお話を伺いました。

奥田さんの嫁ぎ先は農家。おじいちゃん、おばあちゃんが育てる野菜のおいしさに出会ったことが、今のお仕事につながっています。

もともとは花のお仕事をされ、その後、子育ての中でパン作りを学び、パン教室を開くようになった奥田さん。お話の中にあった「望まれたところに身を置く」という言葉が、その歩みを表していました。

畑仕事がだんだん難しくなってきた家族のために、何かできることはないか。そうして始めたのが、採れた野菜を届ける野菜便でした。

喜んでもらえるのがうれしくて、届ける野菜を増やしていったそうです。ところが、注文は減ってしまいました。

理由を聞くと、おいしくても、たくさんあると食べきれない。仕事や子育てで忙しく、調理する時間がなくて、せっかくの野菜を傷ませてしまうというのです。

そこで奥田さんは、野菜便に手作りのトマトソースを添えました。一緒に届く野菜と合わせて料理できるように。

すると今度は、ソースが欲しいという声が届きます。

野菜を届けるだけでなく、食べてもらえる形にする。

使いきれない人の暮らしまで見つめた、小さな工夫。コトコトのコンフィチュールは、そんなやさしい気づきから育ってきたのだとわかりました。

加工したものを届けるには、保存や衛生について確かめ、施設も整える必要がありました。その歩みの中で伺ったのが、おじいちゃんのお話です。

最期に、何か言い残しておきたいことはないかと尋ねたとき、返ってきたのは「畑が心配や」という言葉だったそうです。

先祖から受け継ぎ、長い時間をかけて耕してきた土地。その畑を、この先も残していきたい。

おじいちゃんの心配を受け止めて、奥田さんは畑を守るための加工施設づくりへと進みました。

今、目の前にあるひと瓶には、野菜のおいしさと一緒に、その野菜を育ててきた家族の時間もつながっている。そんな背景を知ると、棚に並ぶ瓶が少し違って見えてきます。

奥田さんは、自分たちの畑だけでなく、農家さんが育てた野菜をどう食卓へ届けるかにも向き合っています。

加工に回る野菜と聞くと、形が不ぞろいなものを思い浮かべる方も多いと思います。でも、行き先をなくすのは、それだけではないそうです。

この日、話してくださったのは白ねぎのこと。立派に育っていても、急に暖かくなって鍋料理の需要が減ると、売れなくなってしまうことがあるのだと。

農家さんが手間をかけて育てたものが、食べてもらえないままになってしまう。それは、収入だけでなく、作り手の気持ちにもかかわることです。

採れた野菜を、短い間にみんなで食べきるのは難しい。けれど、ソースやジャムに加工すれば、食べてもらえる時間を延ばすことができます。

畑で実ったものを、少し先の食卓へつなぐ。

奥田さんが大切にしている加工の役割は、そこにあるのだと受け取りました。

保存できるものとして届けるために、試作を重ね、検査を繰り返してきたというお話もありました。ひと瓶を仕上げるまでには、食べる人からは見えにくい時間と手間がかかっています。

その積み重ねが、農家さんの実りを無駄にせず、忙しい人の料理を助けることにつながっているのですね。

「コトコト」という名前には、古都・奈良の「コト」や、お鍋でコトコト炊くこと。そして、食べること、笑うこと、楽しいこと、うれしいこと。いろいろな「こと」を重ねた意味が込められているそうです。

ひとつの「こと」に、もうひとつの「こと」が重なると、楽しいことが生まれる。そんな想いで「コトコト」と名付けたと教えてくださいました。

その名前に込められた「楽しいこと」は、日々のものづくりの中にもありました。

重い材料を運び、たくさんの野菜を刻む。体力のいる仕事ですが、スタッフと笑いながら野菜に向き合う毎日を、奥田さんは楽しそうに話してくださいました。

とくに印象に残るのが、商品の名前を考えるときのお話。できあがった瓶を家へ持ち帰り、ベッドにまで連れていって、名前を考えることもあるそうです。

手をかけて生まれたものが、かわいくて仕方がない。その気持ちが、ユーモアのある名前にもつながっています。

忙しく帰ってきた人が、台所で瓶を見て、ふっと笑えたら。料理を助けるだけでなく、使う人の気持ちにも、少しゆとりを届けたい。名付けのお話にも、食卓の先にいる人へのまなざしがありました。

木の棚に並ぶコトコトのソースやコンフィチュールの瓶
ひとつひとつに名前があるコトコトの瓶。作るときの話を聞くと、ラベルを読む楽しみも増えます。

コトコトのお食事会のランチに手書き風の注釈。ロールカツにはバジル、タルタルソースには塩レモン、豚汁にはしょうが、おにぎりの上にはかつお、デザートはレモンゼリー
ロールカツからデザートまで。コトコトのコンフィチュールが、いろいろなお料理に使われています。

この日のランチには、おにぎりや色とりどりのおかず、小鉢が並びました。器の中だけでなく、トレー全体に彩りが広がっていて、ひとつずつ見ていたくなる食卓です。

料理には、コトコトのコンフィチュールが使われています。ロールカツにはバジル、タルタルソースには塩レモン、豚汁にはしょうが。おにぎりの上のかつおや、デザートのレモンゼリーにも、コトコトのおいしさが添えられていました。

甘いジャムをパンに塗るだけでなく、おかずにも、汁ものにも、デザートにも。その使い方にも出会えるお食事会でした。

お話を聞いてから食卓を眺めると、そこに並ぶものの向こうに、畑と、育てる人と、料理を作る人の姿が浮かびます。

おいしい野菜を、ちゃんと食べてもらいたい。料理をする人には、少しでも楽しく、ゆとりのある時間を過ごしてほしい。

奥田さんがコンフィチュールを作る理由は、その両方にあるのだと思います。

作り手に会って、言葉を聞くことで、ひと瓶の見え方が変わる。奈良でこうした想いに出会えることを、これからも大切に伝えていきたいです。

石をあしらった柱と木の扉がある、天理市のコトコトの外観
今回のお食事会の会場、confiture cotocoto。畑と食卓をつなぐ想いを伺った一日でした。

今回参加したお食事会

  • イベント名:NARA source meet|小さな交流会
  • 開催日時:2026年10月20日(火)10:00〜13:00
  • お話:奥田晶子さん(confiture cotocoto)
  • 会場:confiture cotocoto(奈良県天理市檪本町1560-1)
  • イベント案内:Instagram「naramonotsuwamono」

※今回参加した、開催済みのお食事会の記録です。

奥田さんの想いや、コトコトのコンフィチュールをもう少し知りたくなった方は、公式サイトものぞいてみてください。

confiture cotocoto 公式サイトを見る

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